歳の差 ~15歳年下男子は、恋愛対象ですか?~
「中谷さん!」
「・・・原田さん、どうしたの?」
「あの・・・」
「北原くんのこと? それとも・・・」
「あ、北原くんのことで」
「なんだ、こないだの返事かと思った」
「それは・・・」
自分の中で一旦の答えは出したものの、このタイミングで伝えるかどうか迷った。
「急がなくていいって言ったのは俺だから、まだいいよ。急いだせいで、望んだ返事じゃなくなるのは嫌だから」
「・・・もう少し、時間もらっていい?」
「もちろん。そしたら、ひとつ付け加えたいことがあるんだけど」
「何?」
「俺は、正直に言うと結婚も視野に入れてる。だから原田さんのこと、付き合う相手っていうより結婚相手として考えてるよ」
「え?」
「お互いの仕事への理解とか、一緒に暮らしたらどうなるかとか」
そうか、中谷さんにとって、私はキュンとする相手じゃなくて、実際に生活していく相手なんだ。
一度結婚しているからか、年齢的なものなのか、それはともかく、これから先の私との現実を見ているんだ。
そういう視点では、考えてなかった・・・。
「そうなんだ。私も、それ含めて考えてみます」
「うん、そうしてくれるかな」
もし付き合うのなら、いずれ考えなければいけないことだし、私も考えてみようと思った。
「ところで・・・彼、何かワケありなの? あの子、プロ入り期待されてたサッカー選手だよね?」
「そうみたい。私はよく知らないんだけど、社長が彩のご主人に、少し面倒見てほしいって頼まれたみたいで」
「なんかすごいケガして将来絶望ってニュースを見たけど、まさか広瀬社長のところにいるとはね」
ただ、と中谷さんは、普段見たことがない表情で私に言った。
「俺としては、北原くんがどうこうっていうより、原田さんの近くに別の男がいることが気に入らない・・・かな」
「そんな、別の男って・・・彼、大学生だよ?」
「歳は関係ないよ。さっき原田さんが北原くんに笑い掛けてるところを見て、何だかおもしろくないと思ったしね。とられるか
もしれないっていう、男の勘じゃない?」
困ったな・・・。
こういう時、どんな顔をすればいいんだろうか。
「ごめん。ちょっと言い過ぎた。困らせるつもりじゃなかったんだ」
「・・・うん」
「俺、余裕ぶってるけど、本当は全然余裕無くてさ。原田さんと話す度に、いつ断られるんだろうってヒヤヒヤしてるんだ。それなのに、更に別の男が現れるなんて、完全に想定外」
じゃ、と中谷さんは駅に向かって歩いて行った。
その後ろ姿を見ながら、思わずため息をついた。頭がいっぱいで整理がつかない。
ひとまずオフィスに戻ったものの、仕事が手につかなかった。
いつもなら、なんてことないシュミレーションの計算でさえ、数字が合わずに何度もやり直した。
こんなふうになるのが嫌だから、恋愛から遠ざかっていたのに・・・。
答えを延ばした自分のことは棚に上げて、中谷さんを恨んだ。
締切の迫った仕事をなんとか終わらせて、オフィスを後にした。
疲れた・・・。
ザワザワする頭と心を抱えて、私はぼんやりと帰り道を歩いた。
「・・・原田さん、どうしたの?」
「あの・・・」
「北原くんのこと? それとも・・・」
「あ、北原くんのことで」
「なんだ、こないだの返事かと思った」
「それは・・・」
自分の中で一旦の答えは出したものの、このタイミングで伝えるかどうか迷った。
「急がなくていいって言ったのは俺だから、まだいいよ。急いだせいで、望んだ返事じゃなくなるのは嫌だから」
「・・・もう少し、時間もらっていい?」
「もちろん。そしたら、ひとつ付け加えたいことがあるんだけど」
「何?」
「俺は、正直に言うと結婚も視野に入れてる。だから原田さんのこと、付き合う相手っていうより結婚相手として考えてるよ」
「え?」
「お互いの仕事への理解とか、一緒に暮らしたらどうなるかとか」
そうか、中谷さんにとって、私はキュンとする相手じゃなくて、実際に生活していく相手なんだ。
一度結婚しているからか、年齢的なものなのか、それはともかく、これから先の私との現実を見ているんだ。
そういう視点では、考えてなかった・・・。
「そうなんだ。私も、それ含めて考えてみます」
「うん、そうしてくれるかな」
もし付き合うのなら、いずれ考えなければいけないことだし、私も考えてみようと思った。
「ところで・・・彼、何かワケありなの? あの子、プロ入り期待されてたサッカー選手だよね?」
「そうみたい。私はよく知らないんだけど、社長が彩のご主人に、少し面倒見てほしいって頼まれたみたいで」
「なんかすごいケガして将来絶望ってニュースを見たけど、まさか広瀬社長のところにいるとはね」
ただ、と中谷さんは、普段見たことがない表情で私に言った。
「俺としては、北原くんがどうこうっていうより、原田さんの近くに別の男がいることが気に入らない・・・かな」
「そんな、別の男って・・・彼、大学生だよ?」
「歳は関係ないよ。さっき原田さんが北原くんに笑い掛けてるところを見て、何だかおもしろくないと思ったしね。とられるか
もしれないっていう、男の勘じゃない?」
困ったな・・・。
こういう時、どんな顔をすればいいんだろうか。
「ごめん。ちょっと言い過ぎた。困らせるつもりじゃなかったんだ」
「・・・うん」
「俺、余裕ぶってるけど、本当は全然余裕無くてさ。原田さんと話す度に、いつ断られるんだろうってヒヤヒヤしてるんだ。それなのに、更に別の男が現れるなんて、完全に想定外」
じゃ、と中谷さんは駅に向かって歩いて行った。
その後ろ姿を見ながら、思わずため息をついた。頭がいっぱいで整理がつかない。
ひとまずオフィスに戻ったものの、仕事が手につかなかった。
いつもなら、なんてことないシュミレーションの計算でさえ、数字が合わずに何度もやり直した。
こんなふうになるのが嫌だから、恋愛から遠ざかっていたのに・・・。
答えを延ばした自分のことは棚に上げて、中谷さんを恨んだ。
締切の迫った仕事をなんとか終わらせて、オフィスを後にした。
疲れた・・・。
ザワザワする頭と心を抱えて、私はぼんやりと帰り道を歩いた。