歳の差 ~15歳年下男子は、恋愛対象ですか?~
3.変化
目が覚めて、慌てて時計を見た。もう7時を回っている。
アラームを掛け忘れたのか・・・たったそれだけのことにも、うんざりした。
7時に起きたからといって、別に遅刻するわけでもないし、何かマズイことが起こるわけでもない。
でも、明らかに調子がズレている自分を、どうにも制御できなかった。
今日、仕事どうしようか。まさかこんなことで休む日が来るなんて。
社長に電話しないと・・・。
誰かの想いを受け止めることが、こんなに苦しいとは思わなかった。
そう、苦しい。まだ付き合い始めてもいないのに。
「社長、おはようございます。今日、お休みいただいてもいいですか?」
「どうした。その言い方だと、具合悪いわけじゃないよな。何かあったのか?」
「・・・あったような、無かったような」
「あんまり無理するなよ。心の風邪の方が、タチ悪いんだからさ」
「はい」
心の風邪か。
ベッドから出て、とりあえず何か食べることにした。まだ食べる元気は残っているようで、自分でも安心した。
今日一日、何しよう・・・。
会いたい人がいるとか、したいことがあるとか、そういうものがひとつでもあれば良かったのに、これといって何も無かった。
それだけ仕事を頑張っていたといえば聞こえもいいけれど、仕事の他には何も無い気がして、また嫌になった。
「あー、今日はちょっとダメな日だなー」
パンを温めながら、ふと、北原くんのことを思い出した。
お腹空くから・・・って、パン買ってきてくれたんだよね。
あの時、嬉しかったな。
窓の外を見ると穏やかに晴れていて、外に出ることにした。
靴は・・・スニーカーを履いた。
家の前の通り沿いを、ブラブラと歩いてみる。近くに大きな病院があって、すぐそばのお花屋さんの前を通り掛かるのが楽しみだった。
最近は、いつも閉店した後に帰宅していたから、お花を見る機会もずいぶんと減っていた。
「綺麗だな〜」
いろんな色のお花と、茎や葉っぱのグリーンを見ていたら、なんだか急に泣きたくなった。
心の潤いがほぼゼロだったことに気付いて、我慢しなかったせいか、はらはらと涙がこぼれた。
「これ、使ってください」
差し出されたハンカチ。
そして、この声。
「どうして・・・ここにいるの?」
「それは僕が聞きたいです。どうしてこんなところで泣いてるんですか?」
北原くんがいた。
「僕は知り合いがそこの病院に入院していて、お見舞いに行く前に、花を買いに寄ったんです」
「そうなんだ」
「そしたら、原田さんに似た人が入ってきて、本当に原田さんかって見にきたら、ここで泣いてた」
「そっか。変なとこ見られちゃったね」
「何かあったんですか? 今日休みじゃないですよね?」
何があったと言えばいいんだろうか。
始まってもいない恋愛が、重くて苦しいんです・・・とか、気が付いたら、心がカラカラで泣いてるんです・・・って言えばいいのかな。
「何も無いよ」
答えに困って、思わずそう言った。
「・・・そういう時、効く薬ありますよ」
「え?」
次の瞬間、私は、北原くんの腕の中にいた。
アラームを掛け忘れたのか・・・たったそれだけのことにも、うんざりした。
7時に起きたからといって、別に遅刻するわけでもないし、何かマズイことが起こるわけでもない。
でも、明らかに調子がズレている自分を、どうにも制御できなかった。
今日、仕事どうしようか。まさかこんなことで休む日が来るなんて。
社長に電話しないと・・・。
誰かの想いを受け止めることが、こんなに苦しいとは思わなかった。
そう、苦しい。まだ付き合い始めてもいないのに。
「社長、おはようございます。今日、お休みいただいてもいいですか?」
「どうした。その言い方だと、具合悪いわけじゃないよな。何かあったのか?」
「・・・あったような、無かったような」
「あんまり無理するなよ。心の風邪の方が、タチ悪いんだからさ」
「はい」
心の風邪か。
ベッドから出て、とりあえず何か食べることにした。まだ食べる元気は残っているようで、自分でも安心した。
今日一日、何しよう・・・。
会いたい人がいるとか、したいことがあるとか、そういうものがひとつでもあれば良かったのに、これといって何も無かった。
それだけ仕事を頑張っていたといえば聞こえもいいけれど、仕事の他には何も無い気がして、また嫌になった。
「あー、今日はちょっとダメな日だなー」
パンを温めながら、ふと、北原くんのことを思い出した。
お腹空くから・・・って、パン買ってきてくれたんだよね。
あの時、嬉しかったな。
窓の外を見ると穏やかに晴れていて、外に出ることにした。
靴は・・・スニーカーを履いた。
家の前の通り沿いを、ブラブラと歩いてみる。近くに大きな病院があって、すぐそばのお花屋さんの前を通り掛かるのが楽しみだった。
最近は、いつも閉店した後に帰宅していたから、お花を見る機会もずいぶんと減っていた。
「綺麗だな〜」
いろんな色のお花と、茎や葉っぱのグリーンを見ていたら、なんだか急に泣きたくなった。
心の潤いがほぼゼロだったことに気付いて、我慢しなかったせいか、はらはらと涙がこぼれた。
「これ、使ってください」
差し出されたハンカチ。
そして、この声。
「どうして・・・ここにいるの?」
「それは僕が聞きたいです。どうしてこんなところで泣いてるんですか?」
北原くんがいた。
「僕は知り合いがそこの病院に入院していて、お見舞いに行く前に、花を買いに寄ったんです」
「そうなんだ」
「そしたら、原田さんに似た人が入ってきて、本当に原田さんかって見にきたら、ここで泣いてた」
「そっか。変なとこ見られちゃったね」
「何かあったんですか? 今日休みじゃないですよね?」
何があったと言えばいいんだろうか。
始まってもいない恋愛が、重くて苦しいんです・・・とか、気が付いたら、心がカラカラで泣いてるんです・・・って言えばいいのかな。
「何も無いよ」
答えに困って、思わずそう言った。
「・・・そういう時、効く薬ありますよ」
「え?」
次の瞬間、私は、北原くんの腕の中にいた。