歳の差 ~15歳年下男子は、恋愛対象ですか?~
4.一緒
「終わったーーー」
ひとりの会議室で、思わず声が出た。
時計を見ると、ちょうど22時を回ったところで、まだ電車も走っている。
書類を整え、社長のデスク横にあるキャビネットに納めて、鍵を閉めた。
今回は大丈夫・・・。
気持ちを落ちつかせて、何度も確かめたのだから。
オフィスの明かりを消して、施錠した。
エレベーターを降りると、ビルの出口近くの階段に北原くんがいた。
「どうしたの? こんな時間に」
「原田さん待ってた」
「え?」
「帰るの遅くなったら、俺だって心配だから」
「いつから? ずっと待ってたの?」
「あー、サッカーの試合動画見てたから、あんまり待った感じは無かったけど」
「結構待ったでしょ・・・でも、ありがとう」
「あ、俺が勝手に待ってただけだから」
北原くんの優しさは、いつも自然体だ。
中谷さんのようなスマートさは無いけれど、いつもストレートに心の中に入ってくる。
「北原くん、帰ろう」
「家の近くまで送ってく」
「えーいいよ、駅までで」
「・・・一緒にいたいから、家の近くまで」
「じゃあ、お願いしようかな」
そっと手が触れて、自然に手を繋いだ。
やっぱりあったかくて、ホッとした。
「俺、一緒にいるくらいしかできなくて・・・」
「え?」
「あの人は、直接原田さんの仕事手伝ったりできるけど、俺、そういうのは何もできなくて・・・」
「・・・うん」
「だけど、一緒にいることならできるから」
さっき、中谷さんに『何ができる?』と言われたことを気にしてるんだ。
結婚相手に仕事を理解してもらうとか、生活をサポートしてもらうとか、それも確かに大事なことだと思う。
でも、私が望んでいるのはそこじゃなかった。
仕事も生活も、今なら自分で何とかできる。
そのためにずっと頑張ってきたんだから。
今の私が求めているもの・・・。
私にとって大切なこと・・・。
「ね、じゃあ聞くけど、どのくらい一緒にいてくれる?」
「えっ? どのくらい?」
「そう、どのくらい」
「・・・ずっと」
「え?」
「ずっと一緒にいる」
そう言ってうつむいた北原くんが可愛すぎた。
もうどうしていいか分からず、思わず泣き笑いになった。
「ごめん北原くん、もう降参!」
「えー?」
「ずっと一緒にいてくれたら、私、嬉しくて死んじゃうかも・・・しれ・・・ない」
「え? どうして泣くの?」
「・・・」
「どうしたの?」
どうしたんだろう、涙が止まらない。
誰かと一緒にいるって、誰かがそばにいてくれるって、こんなにも幸せなことだったんだ。
ひとりでもずっと平気だと思っていたし、実際に平気だったのだけれど、本当はそうじゃなくて忘れてただけなんだ。
私にとって大切なのは、相手に何かをしてもらうことよりも、お互いにそばにいて、一緒に笑ったり泣いたりしていたいということだった。
今の私にとって、それが北原くんなんだ・・・。
でも・・・。
でも、ずっと一緒にいるのは難しいんじゃないかと思った。
特に、北原くんは社会人になってどんどん変わっていくのだろうし。
先のことを考えると、急に悲しくなった。
幸せを感じていた涙は、いつしか諦めの涙に変わった。
もし、泣いてどうにかなるなら、それでずっと一緒にいられるのなら、永遠に泣いていたかった。
ひとりの会議室で、思わず声が出た。
時計を見ると、ちょうど22時を回ったところで、まだ電車も走っている。
書類を整え、社長のデスク横にあるキャビネットに納めて、鍵を閉めた。
今回は大丈夫・・・。
気持ちを落ちつかせて、何度も確かめたのだから。
オフィスの明かりを消して、施錠した。
エレベーターを降りると、ビルの出口近くの階段に北原くんがいた。
「どうしたの? こんな時間に」
「原田さん待ってた」
「え?」
「帰るの遅くなったら、俺だって心配だから」
「いつから? ずっと待ってたの?」
「あー、サッカーの試合動画見てたから、あんまり待った感じは無かったけど」
「結構待ったでしょ・・・でも、ありがとう」
「あ、俺が勝手に待ってただけだから」
北原くんの優しさは、いつも自然体だ。
中谷さんのようなスマートさは無いけれど、いつもストレートに心の中に入ってくる。
「北原くん、帰ろう」
「家の近くまで送ってく」
「えーいいよ、駅までで」
「・・・一緒にいたいから、家の近くまで」
「じゃあ、お願いしようかな」
そっと手が触れて、自然に手を繋いだ。
やっぱりあったかくて、ホッとした。
「俺、一緒にいるくらいしかできなくて・・・」
「え?」
「あの人は、直接原田さんの仕事手伝ったりできるけど、俺、そういうのは何もできなくて・・・」
「・・・うん」
「だけど、一緒にいることならできるから」
さっき、中谷さんに『何ができる?』と言われたことを気にしてるんだ。
結婚相手に仕事を理解してもらうとか、生活をサポートしてもらうとか、それも確かに大事なことだと思う。
でも、私が望んでいるのはそこじゃなかった。
仕事も生活も、今なら自分で何とかできる。
そのためにずっと頑張ってきたんだから。
今の私が求めているもの・・・。
私にとって大切なこと・・・。
「ね、じゃあ聞くけど、どのくらい一緒にいてくれる?」
「えっ? どのくらい?」
「そう、どのくらい」
「・・・ずっと」
「え?」
「ずっと一緒にいる」
そう言ってうつむいた北原くんが可愛すぎた。
もうどうしていいか分からず、思わず泣き笑いになった。
「ごめん北原くん、もう降参!」
「えー?」
「ずっと一緒にいてくれたら、私、嬉しくて死んじゃうかも・・・しれ・・・ない」
「え? どうして泣くの?」
「・・・」
「どうしたの?」
どうしたんだろう、涙が止まらない。
誰かと一緒にいるって、誰かがそばにいてくれるって、こんなにも幸せなことだったんだ。
ひとりでもずっと平気だと思っていたし、実際に平気だったのだけれど、本当はそうじゃなくて忘れてただけなんだ。
私にとって大切なのは、相手に何かをしてもらうことよりも、お互いにそばにいて、一緒に笑ったり泣いたりしていたいということだった。
今の私にとって、それが北原くんなんだ・・・。
でも・・・。
でも、ずっと一緒にいるのは難しいんじゃないかと思った。
特に、北原くんは社会人になってどんどん変わっていくのだろうし。
先のことを考えると、急に悲しくなった。
幸せを感じていた涙は、いつしか諦めの涙に変わった。
もし、泣いてどうにかなるなら、それでずっと一緒にいられるのなら、永遠に泣いていたかった。