歳の差 ~15歳年下男子は、恋愛対象ですか?~
「中谷さん、今夜お時間ありますか?」
今夜、返事をしようと考えていた。
結婚も見据えて付き合ってほしいと言ってくれたことへの返事を。
もちろん、中谷さんの望む答えではないことを分かっているけれど、できるだけ正直にそのまま伝えられたと思っている。
「今夜、いいですよ」
「じゃあ、19時に彩で」
「分かりました・・・また夜に」
『分かりました』の後に空いた少しの間で、私がなぜ誘ったのか、もう気付いたのだろうと感じた。
「こんばんはー」
「あら瑛美ちゃん、いらっしゃい。ひとり?」
「いえ、これから中谷さんと待ち合わせなんです」
「ふーーーん。なんだか訳ありって感じ~」
「聖美さんて、スピリチュアルな力とかあるんじゃないですか? いつも当てますよね」
「ふふ、どうなのかしらね。でも、いろんなお客さま見てると、なんとなく分かるのよね。今日はいいことあったんだろうなとか、上手くいかないことがあったんだろうなって」
「そういう時って、どう接するんですか?」
「基本的には何もしないかな。言いたくなったら、お客さまの方から言ってきてくれるからね。でもたまに、言葉も出ないくらい落ち込んでる人がいるから、その時はひと言だけ声をかけるかな」
「何て言うんですか?」
「そうねぇ・・・『大変な時に、ここに来てくれてありがとう』って」
「えー、そんなこと言われたら泣いちゃうなぁ」
「そう、泣いちゃう人もいる。いいのよそれで。泣くと、浄化されるでしょ」
大変な時に頼りにしてくれるって、すごいことなんだ。
それが、人でも場所でも。
私も、誰かにとって頼りにできる人になれたら・・・そう思った。
「原田さん、お待たせ」
「こんばんは。いえ、聖美さんと話してたから、全然」
「そうなんだ、どんな話を?」
「彩にくるお客さまが、その日何を抱えて来てるか、聖美さんにはお見通し・・・って」
「へぇ、それはすごい。じゃあ、俺のことも分かりますか?」
「えー、中谷さん? そうねぇ・・・何ていうか、すっきりした感じ? 迷いが無い感じがするけど」
「こわっ! 何者ですか?」
「ふふふ、ごゆっくり。また後で来るわね」
そうか、迷いが無い中谷さんに水を差す存在なんだな、今夜の私は。
思わず苦笑いした。
でも、今日は返事を伝えると決めていた。
中谷さんのためにも、私のためにも。
「あの・・・中谷さん」
「はい」
「今日は、中谷さんにお返事をしようと思って」
「うん、そうだよね。電話もらった時に、そうかなって」
『ごめんなさい』と言おうとして息を吸った時、中谷さんに先を越された。
「あのさ」
「・・・はい?」
「こないだ、貸しひとつ作ったよね、俺」
「はい。年金の計算を手伝ってもらった時に・・・」
「うん。あの貸しを、ここで返してもらっていいかな?」
「え?」
どういうことだろう。
ここで、このタイミングで返せってどういうこと?
まさか貸しがあるから付き合え・・・って、それはさすがに無いか。
だとしたら、何だろう。
「俺、原田さんに、付き合ってほしい、結婚も考えてる・・・って言ったよね」
「はい」
「それ、無かった事にしてもらえないかな」
中谷さんは全く予想もしなかったことを口にした。
今夜、返事をしようと考えていた。
結婚も見据えて付き合ってほしいと言ってくれたことへの返事を。
もちろん、中谷さんの望む答えではないことを分かっているけれど、できるだけ正直にそのまま伝えられたと思っている。
「今夜、いいですよ」
「じゃあ、19時に彩で」
「分かりました・・・また夜に」
『分かりました』の後に空いた少しの間で、私がなぜ誘ったのか、もう気付いたのだろうと感じた。
「こんばんはー」
「あら瑛美ちゃん、いらっしゃい。ひとり?」
「いえ、これから中谷さんと待ち合わせなんです」
「ふーーーん。なんだか訳ありって感じ~」
「聖美さんて、スピリチュアルな力とかあるんじゃないですか? いつも当てますよね」
「ふふ、どうなのかしらね。でも、いろんなお客さま見てると、なんとなく分かるのよね。今日はいいことあったんだろうなとか、上手くいかないことがあったんだろうなって」
「そういう時って、どう接するんですか?」
「基本的には何もしないかな。言いたくなったら、お客さまの方から言ってきてくれるからね。でもたまに、言葉も出ないくらい落ち込んでる人がいるから、その時はひと言だけ声をかけるかな」
「何て言うんですか?」
「そうねぇ・・・『大変な時に、ここに来てくれてありがとう』って」
「えー、そんなこと言われたら泣いちゃうなぁ」
「そう、泣いちゃう人もいる。いいのよそれで。泣くと、浄化されるでしょ」
大変な時に頼りにしてくれるって、すごいことなんだ。
それが、人でも場所でも。
私も、誰かにとって頼りにできる人になれたら・・・そう思った。
「原田さん、お待たせ」
「こんばんは。いえ、聖美さんと話してたから、全然」
「そうなんだ、どんな話を?」
「彩にくるお客さまが、その日何を抱えて来てるか、聖美さんにはお見通し・・・って」
「へぇ、それはすごい。じゃあ、俺のことも分かりますか?」
「えー、中谷さん? そうねぇ・・・何ていうか、すっきりした感じ? 迷いが無い感じがするけど」
「こわっ! 何者ですか?」
「ふふふ、ごゆっくり。また後で来るわね」
そうか、迷いが無い中谷さんに水を差す存在なんだな、今夜の私は。
思わず苦笑いした。
でも、今日は返事を伝えると決めていた。
中谷さんのためにも、私のためにも。
「あの・・・中谷さん」
「はい」
「今日は、中谷さんにお返事をしようと思って」
「うん、そうだよね。電話もらった時に、そうかなって」
『ごめんなさい』と言おうとして息を吸った時、中谷さんに先を越された。
「あのさ」
「・・・はい?」
「こないだ、貸しひとつ作ったよね、俺」
「はい。年金の計算を手伝ってもらった時に・・・」
「うん。あの貸しを、ここで返してもらっていいかな?」
「え?」
どういうことだろう。
ここで、このタイミングで返せってどういうこと?
まさか貸しがあるから付き合え・・・って、それはさすがに無いか。
だとしたら、何だろう。
「俺、原田さんに、付き合ってほしい、結婚も考えてる・・・って言ったよね」
「はい」
「それ、無かった事にしてもらえないかな」
中谷さんは全く予想もしなかったことを口にした。