歳の差 ~15歳年下男子は、恋愛対象ですか?~
5.可能性
「瑛美、久しぶりだな」
「えー、ひろくん! どうしたの?」
久しぶりに実家に顔を出すと、イギリスにいるはずの兄がいた。
「おまえねー、40過ぎの男に『ひろくん』とか言うなよ〜。恥ずかしいだろ」
「あら、いいじゃない。ねぇ、瑛美ちゃん」
「わ! 結子さんも。嬉しい! いつまで日本にいるの?」
「いつまで・・・っていうか、人を探してるんだ。見つかり次第か、見つからずに諦め次第か」
「そうなんだ」
兄は整形外科の医師で、イギリスに派遣されている時に現地の商社にお勤めの結子さんと出会い、結婚して今もイギリスに住んでいる。
「ところで、ひろくんて今イギリスで何してるの?」
「瑛美には言ってなかったっけ。今はスポーツドクターやってるんだよ。スポーツ選手を専門に診てるんだ」
「へぇ・・・サッカー選手とか?」
「診てるよ。このところだと、膝のケガが多いかな」
「瑛美ちゃん、この人結構評判良くて。向こうじゃ『ヒロ』って呼ばれて、プロ選手からのご指名もあるの!」
あれ、ちょっと待って。
サッカー選手、膝のケガ、プロ選手・・・それって、もしかして・・・。
心臓の鼓動が、心なしか早くなった。
「ねぇ、ひろくん。ちょっとお願いがあるんだけど」
「珍しいな、瑛美が俺にお願いなんて。何だ?」
「うん・・・ひろくんに、診てもらいたい人がいるんだけど」
「俺に?」
「ひろくんがどういう診断をするのか、聞いてみたい人がいて」
「いいけど・・・何か訳アリなのか?」
「うん、ちょっとね」
「それ、今日でもいいか? 明日から、あまり時間取れなくて」
「もちろん。すぐ連絡する」
北原くん・・・颯太に、もう本当に可能性が無いのかを確かめたかった。
ただ、無いと診断された時のことを考えると、颯太を余計に傷付けてしまうとも思ったけれど、このタイミングで兄が帰国するなんて、何か不思議な縁があるんじゃないかと感じた。
「もしもし、颯太?」
「うん」
「ちょっと話があるんだけど、いま大丈夫?」
「大丈夫だけど、どうしたの?」
「颯太、いまから私が言うことをよく聞いて」
私は颯太に、兄とのやり取りを伝えた。
そして、もしダメだった時のことも隠さずに伝えた。
傷付くのは私じゃない、颯太だから。
「行くよ。今から行く」
「・・・いい結果じゃないかもしれないけど、大丈夫?」
「大丈夫じゃないけど、これ逃したら、絶対後悔すると思うから」
「そっか・・・」
「瑛美さん、一緒に話を聞いてくれる?」
「もちろん。颯太がいいなら」
「じゃ、これから出るから」
これ逃したら、絶対後悔する・・・か。
そうだよね。
もしも可能性があるなら・・・って、考えるよね。
「ひろくん、これから来るって。30分くらいで」
「そうか。でも家だし、当然詳しい検査とかできないの分かってると思うけど、それでもいいのか?」
「うん。ひろくんの腕、信用してるからね」
「調子のいいヤツだな。俺が向こうで何してるか知らなかったくせに」
「アハハ」
「ところで誰が来るんだ? 瑛美の友達に、スポーツやってるような人いたか?」
「あ、うん。実は北原 颯太くんていう、元サッカー選手で、膝のケガでプロ入りダメになった子が・・・」
そこまで聞いて、兄の表情が変わった。
「嘘だろ・・・。俺が探してるのは、その北原 颯太なんだよ」
「えー、ひろくん! どうしたの?」
久しぶりに実家に顔を出すと、イギリスにいるはずの兄がいた。
「おまえねー、40過ぎの男に『ひろくん』とか言うなよ〜。恥ずかしいだろ」
「あら、いいじゃない。ねぇ、瑛美ちゃん」
「わ! 結子さんも。嬉しい! いつまで日本にいるの?」
「いつまで・・・っていうか、人を探してるんだ。見つかり次第か、見つからずに諦め次第か」
「そうなんだ」
兄は整形外科の医師で、イギリスに派遣されている時に現地の商社にお勤めの結子さんと出会い、結婚して今もイギリスに住んでいる。
「ところで、ひろくんて今イギリスで何してるの?」
「瑛美には言ってなかったっけ。今はスポーツドクターやってるんだよ。スポーツ選手を専門に診てるんだ」
「へぇ・・・サッカー選手とか?」
「診てるよ。このところだと、膝のケガが多いかな」
「瑛美ちゃん、この人結構評判良くて。向こうじゃ『ヒロ』って呼ばれて、プロ選手からのご指名もあるの!」
あれ、ちょっと待って。
サッカー選手、膝のケガ、プロ選手・・・それって、もしかして・・・。
心臓の鼓動が、心なしか早くなった。
「ねぇ、ひろくん。ちょっとお願いがあるんだけど」
「珍しいな、瑛美が俺にお願いなんて。何だ?」
「うん・・・ひろくんに、診てもらいたい人がいるんだけど」
「俺に?」
「ひろくんがどういう診断をするのか、聞いてみたい人がいて」
「いいけど・・・何か訳アリなのか?」
「うん、ちょっとね」
「それ、今日でもいいか? 明日から、あまり時間取れなくて」
「もちろん。すぐ連絡する」
北原くん・・・颯太に、もう本当に可能性が無いのかを確かめたかった。
ただ、無いと診断された時のことを考えると、颯太を余計に傷付けてしまうとも思ったけれど、このタイミングで兄が帰国するなんて、何か不思議な縁があるんじゃないかと感じた。
「もしもし、颯太?」
「うん」
「ちょっと話があるんだけど、いま大丈夫?」
「大丈夫だけど、どうしたの?」
「颯太、いまから私が言うことをよく聞いて」
私は颯太に、兄とのやり取りを伝えた。
そして、もしダメだった時のことも隠さずに伝えた。
傷付くのは私じゃない、颯太だから。
「行くよ。今から行く」
「・・・いい結果じゃないかもしれないけど、大丈夫?」
「大丈夫じゃないけど、これ逃したら、絶対後悔すると思うから」
「そっか・・・」
「瑛美さん、一緒に話を聞いてくれる?」
「もちろん。颯太がいいなら」
「じゃ、これから出るから」
これ逃したら、絶対後悔する・・・か。
そうだよね。
もしも可能性があるなら・・・って、考えるよね。
「ひろくん、これから来るって。30分くらいで」
「そうか。でも家だし、当然詳しい検査とかできないの分かってると思うけど、それでもいいのか?」
「うん。ひろくんの腕、信用してるからね」
「調子のいいヤツだな。俺が向こうで何してるか知らなかったくせに」
「アハハ」
「ところで誰が来るんだ? 瑛美の友達に、スポーツやってるような人いたか?」
「あ、うん。実は北原 颯太くんていう、元サッカー選手で、膝のケガでプロ入りダメになった子が・・・」
そこまで聞いて、兄の表情が変わった。
「嘘だろ・・・。俺が探してるのは、その北原 颯太なんだよ」