歳の差 ~15歳年下男子は、恋愛対象ですか?~
ひろくんが探してるのは颯太って、どういう・・・。


「ひろくん、どうして颯太を?」

「そんなの俺が聞きたいよ。瑛美、どうして北原 颯太のこと知ってるんだよ」

「どうしてって・・・いろいろあって、うちのオフィスでアルバイトしてて、それで・・・」

「それにしたって、俺に診てほしい、すぐ連絡がつく、颯太って呼び捨て・・・おまえ、まさか!」

「アハハハ・・・」

「アハハハじゃないよー。いったい何歳下だよ、犯罪だぞ」

「余計なお世話です」

「しかし驚いたな。何の手掛かりも無かった探し物が、こんなに早く見つかるとはね」

「でも本当に、どうして颯太を?」


実は・・・と、兄が話し始めた。

颯太が大ケガをした時、日本の関係者から連絡が飛んだのだけれど、イギリスで有名選手の大きな手術が控えていて、その医師団に加わっていた兄は帰国できなかったのだそうだ。

日本ではまだ珍しい術式で、対応できる医師が手配できなかったこともあり、颯太は運動することを諦めて、歩けるようになることを前提とした手術を受けたそうだ。

そうだったんだ。
だから大ケガのわりに、歩く姿にはあまり違和感が無かったのか。


「もし、もしその時ひろくんが間に合ってたら・・・」

「どうだろうな。それは分からないけど、可能性はあったかもしれない。向こうが落ち着いて、日本に連絡取ってみたらさ、ひどい扱いだったよ。もう誰もケアしてないって聞いて、悲しかった。だから結子にも相談して、北原 颯太を探しに日本へ帰ってきたんだよ」

「ひろくん・・・」

「でも、不思議なもんだよな。まさか俺の探してる人が、こんなに近くにいるとは」

「すごいご縁よね、あなた。ありがとう、瑛美ちゃん」


結子さんも涙ぐんでいる。
本当に驚くしかなかった。
私よりも先に、颯太と繋がったのは兄だったのだ。

話しているうちに、颯太が着いた。


「あの、初めまして。北原 颯太です。瑛美さんとお付き合いさせていただいてます」

「瑛美の兄です。いや、本当に不思議な縁で驚いています」

「僕もさっき瑛美さんに聞いて、そんなことがあるんだなって・・・」

「北原くん。さっそくなんだけど、膝、見せてもらえるかな」

「はい、よろしくお願いします」


兄が、医師の顔で颯太を診ている。


「歩くのは何とも無いの?」

「はい」

「走ったりは?」

「筋が突っ張るので、してないです」

「そう。椅子に座ったりは?」

「ゆっくり動かすのは、大丈夫です」


傷の周辺を触ったり、膝をゆっくりと曲げ延ばししてみながら兄は言った。


「北原くん、手術とリハビリどうだった?」

「結構、辛かったです。思うように身体が動かなくて」

「そうだよね・・・」


うーん、と腕組みをしながら、兄は目を閉じた。


「さて、どうしようかなー」

「ひろくん、どう?」

「そうだな。北原くんも、瑛美も、結子も聞いて」


兄は、颯太を真っ直ぐ見つめて言った。


「北原くん、もう一回苦しむ覚悟はある?」

「えっ?」

「手術とリハビリ」

「・・・それって・・・」


颯太の目に、ほんの少し喜びの光が見えた気がした。


「可能性はゼロじゃないと思う。考えていたより状態は悪くないし、必要な組織も残ってそうだ。ただ、絶対じゃないし、成功したとしても、かなりリハビリが苦しいのは間違いないよ。上手くいかなければ、今よりも歩きづらくなることだってある」

「・・・はい」

「どうしたいかよく考えて、返事をもらえるかな。手術するなら、向こうでいろいろ準備もあるから」


颯太は目を閉じて、考えを巡らせているようだった。
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