歳の差 ~15歳年下男子は、恋愛対象ですか?~
中谷さん、忙しさが原因で離婚したと言っていたけれど、ちょっと分かるかな・・・。

私もこの歳まで結婚していないのは、30歳になるまでは結婚を考えていなくて、30歳を過ぎてからは、資格を取ったり、いまの仕事で一人前になりたくて頑張ってたから、誰かと深く付き合っている暇が正直無かった。

その分、いまこうして充実した仕事ができているわけだから、これはこれでアリだなと考えていたし。
税理士さんなら尚更かなって思った。


「瑛美ちゃん、晩メシどうする? これから所長と(いろどり)に行こうかと思うんだけど」


社長たちは、お昼からの打ち合わせと、税理士さん同席での午後の相続対応を終えて、ようやくひと息ついたらしい。


「あ、彩のご主人が、珍しいお酒が入ったから来て・・・って、ランチ取りに行った時に仰ってましたよ」

「そうなんだ、じゃ瑛美ちゃんも行くか。そしたら・・・」


中谷くんもどう?、と社長が声を掛けていた。


「原田さんは結構飲めるの? こいつ、あんまり飲めないから、手加減してやって」

「所長、もしかしたら瑛美ちゃんが一番イケる口かもしれないよ」

「ちょっと社長、やめてくださいよ〜」


オジサンたちとの掛け合いを見て、中谷さんが笑っている。
う! 大酒飲みだと思われたか・・・。

彩では、最初4人でテーブルについたものの、いつも通り、途中から私はカウンターに行き、奥さんの聖美(きよみ)さんとの女子トークで盛り上がっていた。


「瑛美ちゃんが来てくれると嬉しい。特に夜は男の人がほとんどだから、瑛美ちゃんと話してると気が紛れるのよね」

「私も、聖美さんのお料理いただきながらおしゃべりするの楽しくって。ほらこちらも仕事柄、男の人が多いので」

「そうよね〜。ね、瑛美ちゃん、最近の恋愛事情はどうなの?」

「あ、それ、俺も聞きたいです!」


中谷さんがグラスを持ってカウンターにやって来た。


「あら、あっちはいいの?」

「いやぁ、もうついていけないですよ。所長も広瀬社長も、ペース早くて」

「そっか。中谷さん、あまり飲めないんだって」

「じゃあ、こっちでご飯食べる? お酒はもういいのかな?」

「はい、ご飯にします」

「瑛美ちゃんは?」

「私はもう少し焼酎を・・・同じのロックで」

「へぇ、原田さんほんとイケるんだー」

「瑛美ちゃんは強いわよ。ねぇ、あなた」


話を振られたご主人が、こちらを見て笑っている。


「ところで、原田さんの恋愛事情って何ですか?」

「ほら、瑛美ちゃん仕事はバリバリだけど、そっちの方どうなのかなーって。あんまりデートしてる噂も聞かないし」

「確かに、毎日20時くらいまで連絡取り合ったりしてますね」

「ダメよ瑛美ちゃん。恋愛しなきゃ!」

「そんな、ダメって言われても」

「誰か、周りに素敵な人いないの?」

「えー、急にそんなこと言われても〜」

「あら、よく考えたらここにいるじゃない。中谷さん、ご結婚は? お付き合いしてる人いるの?」

「え、俺ですか!?」


私はほろ酔いだったこともあり、話の内容は聞かずに、ぼんやりとふたりの様子を眺めながらグラスを傾けていた。
聖美さんが話の勢いで、デートの約束をしてしまったのも知らずに。
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