歳の差 ~15歳年下男子は、恋愛対象ですか?~
その日は突然やってきた。

突然・・・だったのはもちろん私だけで、中谷さんは、どこに行こうか、迷いに迷っていたことを後から聞いた。


「じゃあ税額はこれで確定ということで。・・・ところで、今夜の件なんですけど」

「はい、じゃ書類は後ほど。え、今夜の件ですか?」

「本当に申し訳ないです・・・所長の代理で、急遽来客の対応があって」

「・・・は、はい」

「少し遅くなっても大丈夫ですか? 時間、分かり次第ご連絡します。じゃ、また」


今夜の件? 少し遅くなるって、何が??
よく分からず混乱していると、オフィスに聖美さんが訪ねてきた。


「聖美さん、どうしたんですか? もうすぐ夜のお店の時間ですよね?」

「あ、うん、りんごをたくさんいただいたから、持って行けってうちの人が。あと・・・実は瑛美ちゃんに謝らないといけないことがあって」


勝手に、中谷さんとデートの約束をしちゃった・・・って。
つい話が盛り上がって、中谷さんに、私をご飯に連れて行くように言っちゃった・・・って。
なるほど、そういうことだったのか。今夜の件て、それだったんだ。


「もっと早く言わなきゃと思ってたんだけど、タイミングが無くて・・・。ごめん!」

「ふふ、大丈夫です。さっき中谷さんから電話があった時は、何のことか分からなかったんですけどね〜」

「ほんとごめん。美味しいお店を探してって言ってあるから、ね!」

「そうなんですね。どこかなー、楽しみです」


聖美さんのご好意は、ありがたく受け取ることにした。
私も、中谷さんをいいなと思いつつ、じゃあどうする?なんて考えてもいなかったし。
せっかくの機会だから、流れに乗ることにしよう。

ただ・・・。


「聖美さん、急だったから服が全然間に合ってないんです」

「・・・瑛美ちゃん、何着ていくつもり?」

「え?」

「デートっていっても、まずはお友達からなんだし、いつも通りでいいじゃない。ワンピースでも買うつもり?」

「デートって、オシャレしなくていいんですか?」

「いいのいいの。仕事帰りなんだし、普段通りの方が後々ラクでしょ。最初から頑張らなくていいのよ」

「なるほど・・・」

「瑛美ちゃん、仕事はできるのにねぇ」

「アハハハ」

「じゃ、そろそろお店に戻るわね。楽しんできて!」


そっか、普段通り・・・か。
それなら、髪の毛はおろしていこうと思った。
普段は仕事で邪魔にならないように結んでるから、それくらいの違いはあってもいいかなって。


「瑛美ちゃん、中谷くんから電話だよ」

「はーい」


社長に呼ばれて電話に出ると、予定より早く終わったから、これから向かうとのことだった。
お店の場所を聞くと、このオフィスからわりと近かったから、メイクと髪の毛を直す時間が取れそうだ。


「社長、そろそろあがりますね。急ぎの案件とかありますか?」

「いや、今日明日は特に無いよ。俺もそろそろ帰ろうと思ってた」

「良かった。じゃ、お疲れさまです」


トイレに寄り、メイク直しをして、髪の毛を下ろした。
今朝は時間があったから、毛先を巻いてきて良かった!
そんなことを考えながら、約束のお店に向かった。
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