歳の差 ~15歳年下男子は、恋愛対象ですか?~
お店の前で話すのも・・・と、少し歩いたところにあるカフェにふたりで入った。
「あの日の夜、タクシーで家に帰ったのは覚えてるんだけど、その前のこと、あまり覚えてなくて」
「・・・そうですか」
「普通に会計してタクシーで帰ったと思って、あまり気にしてなかったんだけど」
「はい・・・」
「こんなこと言うのも本当に失礼なんだけど、どうして原田さんからお礼の連絡とか無いのかなって考えてた」
「え?」
嘘でしょ? そんなことってある?
「だけど何日か経って、逆に何か変だなって思い始めて。財布見ても払った感じが無いし、どういうことだろうって」
「・・・」
「お店に電話して、聞いて驚いた。驚いて、今度は逆にどうして何も言ってくれなかったのかって考え始めたら、訳わかんなくなって。気付いたら、もう何日も過ぎてた」
「そう・・・ですか」
言葉が無かった。色んな意味で、適切な言葉が出てこなかった。
イラッとする部分もあったし、どこかで共感する部分もあったし、私もどう言っていいか分からなかった。
「だけどさ、そんなこと考えても意味無いなって。お店もタクシーも、酔っ払った俺に代わって原田さんが払ってくれた。事実はそれだけでしょ。俺が何をどう考えるかよりも、まずそこかなって」
「中谷さん・・・」
「だから、あの日は本当にごめん。ありがとう、助けてくれて」
そう言って頭を下げる中谷さんを見ていて、私も恥ずかしくなった。
私も、変な意地張ってたと思うから・・・。こっちが面倒見てやったのに、って。
「あの、もう頭上げてください。私も、ごめんなさい。ちゃんと言えば良かったのに、中谷さんから連絡が来るものだと・・・」
「え? そうだったんだ」
「・・・はい」
お互い早く連絡すれば良かったね、と氷の溶けたコーヒーを飲みながら中谷さんが笑った。
「本当は、違うんだ」
「え?」
「原田さん、聞いてたでしょ? 俺、忙しいから離婚したって。もっともらしい理由を言ったけど、本当の理由はそれじゃなかったんだよね」
「・・・どういうこと?」
「もちろん、忙しかったのも事実なんだけど、それを言い訳に、話をしたり、思ってることを伝えたりするのを面倒だと感じるようになって」
「そう・・・なんだ」
「それを続けてるうちに、埋まらない溝ができたっていうね」
「あー・・・」
「ほんと『あー』だよね」
私も同じだった。
誰かと深く付き合っている暇が無かった・・・のは、別に時間が無かったからじゃなく、正直、誰かとまともに向き合うのが面倒だったからだ。
そこに、時間を掛けたくなかった。
「同じ失敗したらさ、俺、離婚から何も学んでないってことになるから、さすがにそれはどうかって」
「あーーー、私も変なプライド捨てなきゃー」
「え?」
「ほんと可愛げが無くて」
「そんなことないよ。あの夜も言ったけど、俺、原田さんのこといいなって思ってる」
「・・・そこは覚えてたんだ」
「もちろん。でも、そこから先は覚えてない」
アハハハ、とふたりで笑った。
「ね、原田さん、俺ともう一回メシ行ってくれる? 今度は、ちゃんと最後まで仕切るから」
「もちろん。喜んで」
ここ数日のモヤモヤが、一気に晴れた。
「あの日の夜、タクシーで家に帰ったのは覚えてるんだけど、その前のこと、あまり覚えてなくて」
「・・・そうですか」
「普通に会計してタクシーで帰ったと思って、あまり気にしてなかったんだけど」
「はい・・・」
「こんなこと言うのも本当に失礼なんだけど、どうして原田さんからお礼の連絡とか無いのかなって考えてた」
「え?」
嘘でしょ? そんなことってある?
「だけど何日か経って、逆に何か変だなって思い始めて。財布見ても払った感じが無いし、どういうことだろうって」
「・・・」
「お店に電話して、聞いて驚いた。驚いて、今度は逆にどうして何も言ってくれなかったのかって考え始めたら、訳わかんなくなって。気付いたら、もう何日も過ぎてた」
「そう・・・ですか」
言葉が無かった。色んな意味で、適切な言葉が出てこなかった。
イラッとする部分もあったし、どこかで共感する部分もあったし、私もどう言っていいか分からなかった。
「だけどさ、そんなこと考えても意味無いなって。お店もタクシーも、酔っ払った俺に代わって原田さんが払ってくれた。事実はそれだけでしょ。俺が何をどう考えるかよりも、まずそこかなって」
「中谷さん・・・」
「だから、あの日は本当にごめん。ありがとう、助けてくれて」
そう言って頭を下げる中谷さんを見ていて、私も恥ずかしくなった。
私も、変な意地張ってたと思うから・・・。こっちが面倒見てやったのに、って。
「あの、もう頭上げてください。私も、ごめんなさい。ちゃんと言えば良かったのに、中谷さんから連絡が来るものだと・・・」
「え? そうだったんだ」
「・・・はい」
お互い早く連絡すれば良かったね、と氷の溶けたコーヒーを飲みながら中谷さんが笑った。
「本当は、違うんだ」
「え?」
「原田さん、聞いてたでしょ? 俺、忙しいから離婚したって。もっともらしい理由を言ったけど、本当の理由はそれじゃなかったんだよね」
「・・・どういうこと?」
「もちろん、忙しかったのも事実なんだけど、それを言い訳に、話をしたり、思ってることを伝えたりするのを面倒だと感じるようになって」
「そう・・・なんだ」
「それを続けてるうちに、埋まらない溝ができたっていうね」
「あー・・・」
「ほんと『あー』だよね」
私も同じだった。
誰かと深く付き合っている暇が無かった・・・のは、別に時間が無かったからじゃなく、正直、誰かとまともに向き合うのが面倒だったからだ。
そこに、時間を掛けたくなかった。
「同じ失敗したらさ、俺、離婚から何も学んでないってことになるから、さすがにそれはどうかって」
「あーーー、私も変なプライド捨てなきゃー」
「え?」
「ほんと可愛げが無くて」
「そんなことないよ。あの夜も言ったけど、俺、原田さんのこといいなって思ってる」
「・・・そこは覚えてたんだ」
「もちろん。でも、そこから先は覚えてない」
アハハハ、とふたりで笑った。
「ね、原田さん、俺ともう一回メシ行ってくれる? 今度は、ちゃんと最後まで仕切るから」
「もちろん。喜んで」
ここ数日のモヤモヤが、一気に晴れた。