歳の差 ~15歳年下男子は、恋愛対象ですか?~

2.大学生

「戻りまし・・・た」


朝からクライアントに書類を届けに行き、オフィスに戻ってドアを開けると、目の前に北原くんがいた。
え? なぜ北原くんがここに?


「瑛美ちゃんお帰り。彼、こないだ話したアルバイトの北原くん」

「北原 颯太(そうた)です。よろしくお願いします」

「あ、原田 瑛美です。こちらこそ」

「あれ、もしかして面識アリ? 普通、こういう場面は初めましてって言うよね」

「あ・・・こないだ、彩にランチ取りに行った時に、ちょっとだけ話す機会があって」

「そっか。ま、いいや。じゃあ、瑛美ちゃんあと頼んでいいかな? 相続の案件で弁護士さんと約束してて」

「大丈夫です。行ってらっしゃい」


彩のご主人の紹介が、北原くんだとは思わなかった。
彩で友達と話しているのを聞いた時は、シューカツするようなことを言っていたし。


「あの原田さん、僕は何をすれば・・・」

「あ、えっと、席はアシスタントさんの横を使ってください。まずはパソコンの基本的な操作を、アシスタントさんからレクチャーしてもらって・・・」

「わかりました」

「操作に慣れた頃に、声掛けてください」

「はい」


聖美さんから、北原くんはサッカーで大きなケガをしたと聞いた。
シューカツが周りより遅れたのは、サッカーをやっていたからだろうか。

さっき名前を聞いたな・・・。
『北原 颯太』をインターネットで検索して驚いた。

どうやら彼は、大学卒業後にプロ入りの可能性もあったようだけれど、膝の靭帯を痛めたことで一線から離れてしまったらしい。

プロに近いレベルでサッカーをやっていた子が、まさかうちの会社で、それも私の仕事をしてもらうことになるとは。

説明書を見ながら、パソコンの操作を繰り返し試している彼を見た。
前のアシスタントさんが言っていた通り、私の好きなタイプの顔だな・・・。

しばらくの間、私の仕事の手は完全に止まっていた。


「瑛美さーん、税理士の中谷さんからお電話です」

「あ、はーい」


いけないいけない。仕事しなきゃ。


「中谷さん、お疲れさまです」

「こんにちは。今日は忙しいですか?」

「いえ、今日はそれほどでも。そちらは?」

「何件か税務署に提出する書類があるんですが、だいたい準備はできてるので遅くはならなそうです」

「ん? 中谷さん、何の用件で電話してきたんですか?」

「アハハ、バレちゃいました? もし都合が合えば、晩メシに誘おうかと思って掛けました」

「今夜ですか?」

「急ですけど、どうですか? 友達に、いい店を教えてもらったんです。たまたま今夜空いてて」

「中谷さんのリベンジマッチですね」

「そう。お願いできますか?」

「もちろん。じゃ、詳しくは直接・・・」

「連絡しますよ」


それじゃ、と電話が切れた。
こないだカフェで話した帰りに、連絡先を交換した。お店の場所や時間はスマホに送られてくるはずだ。

お昼の少し前に、北原くんが席に来た。


「原田さん、パソコン操作だいたい覚えました」

「そっか、じゃあ・・・ちょうど時間だし、お昼行きましょうか」


社長も不在で、たまたまアシスタントさんも業務に追われていたこともあり、北原くんとふたりだけでランチに行くことになった。
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