学校1人気の先輩は私だけを溺愛する。
「2人とも、急いでちょうだい」

「はい……」

「愛奈ちゃん! 敬語って……やめてちょうだい!」

え? 敬語……。

慣れてしまったから、なおせるかな……。

「車に乗りなさい」

車……初めて乗るな……。

「あ、そうそう。 美里、こんどから電車で行きなさい。 愛奈ちゃんは車ね」

「え……?」

「愛奈ちゃん、何驚いてるの? 当たり前でしょ?」

お母さんの、当たり前がよくわからない。

「私、電車で行きたい……」

「え? なんで……」

先輩がいるから……なんて言えない。

「電車のほうが、好きだから……」

「でも、大変でしょう?」

「いえ、大丈夫、です……」

「また敬語……」

あっ……やっぱり、なおせない。

「敬語を使うのはいいことだけど……お母さんにまで使う必要はないわよ」

「………」

「娘に敬語を使われるのは、嫌だわ」

娘……。

お母さん、私のこと娘って……思ってくれていたんだ……。
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