学校1人気の先輩は私だけを溺愛する。
「お母さん、ちょっと美里の部屋に行ってくるわ」

え? なんで……?

「……あのババア、私の部屋を愛奈の部屋みたいにするつもりよ」

お姉ちゃんの部屋を……私の部屋みたいに?

「え……なんで?」

「なんでって……分かるでしょ?……私のテスト結果が悪かったから」

テスト結果が悪かった……から?

「あのババア、テスト結果とか……成績優先でしょ? ま、その気持ちは分かるけど……さすがにおかしいわ」

昔からお母さんは何故か成績を優先していた。

「昔は愛奈がお母さんに甘やかされてたわよね……」

そうだった。昔は……甘やかされてたんだ。

「愛奈の方が成績が良かったから。それが……悔しかった。だから……私は努力したの」

「…………」

「……で、愛奈よりいい成績を取ったら私が甘やかされて……結局あのババアは私達を道具としか思ってないのよ」

そうなのかな……。

お母さんは……私達を好きじゃ、ないのかな……。

「嫌よね、あんな奴……って私も言えないけど。今までのこと……ごめんね」

「……っ」

お姉ちゃんの悲しそうな、申し訳なさそうな顔に涙が出そうになる。

「謝らなくていいよ。……お姉ちゃん、一緒に……乗り越えよう?」

「……ありがとう」

前よりも、お姉ちゃんと仲良くなれた気がした。

「愛奈ちゃん〜! ちょっと来てくれる?」

「う、うん……」

お母さんがいる2階へ向かう。

「これ、いるかしら?」

私の部屋に置いてあった物を指差しながら言うお母さん。

「はい……いります」

「え?……こんなのいらないでしょ?」

「いえ、いります……」
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