いつでも側に〜一途な両片想い〜
両片想いの行方
 『ありがとう』鈴の心からの言葉は、純真な子供の要素と大人の魅力とを併せもつ笑顔だった。

 誰をも魅了する女優畑中鈴に、魂が宿った瞬間かもしれない。

 思わず見惚れてしまう……。

 十八年の歳月を経て、鈴が鈴らしく笑った瞬間、直人は初めて鈴を見た日を思い出した。

 あの頃から月日は経ち、荒波にもまれ辛い思いをたくさんしたはずなのに、変わらない鈴が愛しくてしかたない。

「鈴は、今まで色々経験してきたと思うけど、どの仕事が好き?」

「う〜ん」

 今まで、自分で仕事を選ぶ事なく、依頼があればよっぽどのことがない限り引き受けてきた。ただ、鈴の純真なイメージを壊すような無茶な依頼がなかったのもラッキーだったのかもしれない。
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