婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「マロンが開いてた窓から外へ逃げ出しちゃってね。リッキーが俺に助けを求めに来たんだ」

 俺は三人兄弟の末っ子で長兄は王太子、次兄は騎士団所属で二人共王宮を空けることも多く忙しい。
 その影響で、内向きで事務的な処理は俺に回ってくる。だから必然と宮にいることも多い。書類を片付けるのも大変な作業で机の上はいつも仕事が山積みではあるけれど。

 初めてできた甥っ子はかわいいし、子供好きも手伝ってリッキーの遊び相手をしていたら自然と懐いてくれて、俺の宮にも度々遊びに来るようになった。俺にとっては年の離れた弟のようなもの。
 
 川のせせらぎを聞きながら蛇行している水路に沿って歩いていく。林の中に入ると木の枝の陰からスポットライトのように陽が差して幻想的な景色を作っている。

「マロンは脱走しちゃったんですね」

「ああ、初めての冒険かな? 東の宮から本宮のローズガーデン辺りまではけっこう距離があるからね。かなりの冒険だよ。初めての外で興奮したのかもしれないね」

 最初は東の宮を探して、それでも見つからないから本宮までみんなで手分けして捜索をして、見つけたのがあの木の上だった。
 ついでにローラまで捕まえちゃったけどね。
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