婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「荷物がすごかったけど、買い物したのかい」

「そうよ。エドガーが買ってくれたのよ。凄いよね。お金持ちってサイン一つでなんでも買えるんだもの」

 皮肉も込めて言ってみた。

「ああ、テンネル侯爵家か。あそこは資産家だからね。そうだった。婚約おめでとう。お祝いが遅くなってしまってごめん。忙しくてなかなか帰れなかったんだ」

「お仕事ならば仕方ないです。お義兄さま、ありがとうございます」

 一応、カーテシーをしてお礼を言ったわ。
 お義兄さまももう少し悔しそうな顔でもしたらいいのに。
 甲斐性がないと言ってるのに、通じなかったんだ。男爵家と侯爵家では比べ物にならないからしょうがないのかな。

「そういえば、ここに絵があったと思うんだけど、どこにいったの? お義兄さま知りません?」

 あたしは玄関の正面に視線を移した。
 そこには両手を広げたくらいの大きな金の額縁の風景画があったはず。
 実際はそれだけでなく、応接室のお高そうな花瓶とか家具類や絵画もいつの間にか無くなっている。
 今では必要最小限度の物しか残ってないし、使用人もそう。
 半分くらいに減ってしまった。
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