婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 でも、上には上があるのよね。

 これ以上の贅沢を知ってしまったら、こんな生活では満足しきれない。
 貴族としての矜持なんてこの家にはないだろうし、裕福な生活なんて夢のまた夢。求めるだけ無駄というもの。期待なんてしてないわ。
 けど、こんな生活もあと少しだから我慢する。

 結婚したら贅沢三昧よ。
 どんなものだって買ってもらえるし美味しいものだって食べられる。ここは質素倹約っていう名の貧乏な食事。お肉も少ししか食べられないんだもん。もっと高級なものが食べたい。


 さて、そろそろ部屋に戻ろうかな。

 ドレスの試着もしてみたいし、アクセサリーもね。
 辛気くさいことは考えてられないわ。貧乏くさいこの家とももうすぐおさらばね。
 
「お義兄さま。勉強があるので先に失礼しますね」

 あたしは挨拶もそこそこに気を取り直し自分の部屋に戻っていった。
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