婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「あの……レイ様?」

「なんだい?」

「これは、いったい、どういうことでしょう? 私は子供ではありませんよ?」

 ドキドキする胸の鼓動を抑えながらレイ様に尋ねました。

「うん。知ってるよ。でもいいでしょ、年なんて関係ないよ。俺が抱っこしたいからしてるんだよ」

 抱っこ……したい……?! 
 言ってる意味が分かりません。衝動的すぎませんか? それに私を抱っこして何がしたいんでしょうか? 

 レイ様の行動は私には理解不能です。

「下ろしてください。レイ様、重いですからきつくなりますよ」

 子供ならいざ知らず、私は大人ですからそこそこ体重もあります。自分で言っていてちょっと悲しいですけど。

「大丈夫。ローラは羽根のように軽いから」

「もう、また。そんな冗談は言わないでください。そんなわけありませんから」

 逃れようと両手で突っぱねようと力を込めましたが、レイ様の体はピクリとも動きません。
 さっきよりも抱き込むように胸に押し付けられてさらに密着度が増したような気がします。
 
「レイ様……」

 私の体はすっぽりと腕の中におさまってしまいました。

 細身に見える体は思っていたよりもがっちりとしていたみたい。広い胸に包まれていると、何故だか温かい気持ちになります……?!
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