婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「ふふふっ」

 確かに想像できるかも。レイ様もリッキー様をとてもかわいがっていますものね。
 
「あと、別名があって桜の宮とも言われている」

「桜の宮ですか?」

 桜とは何でしょう? 初めて聞く名前だわ。

「桜という樹木があるんだ。それに因んで名づけられている」

「桜?」

 聞きなれない名前に首をかしげているとレイ様が説明してくれました。

「南側に桜の木が五本ほどあって、春先に淡紅色の花を咲かせるんだ。きれいだよ。咲き始めも満開も散り際までもね」

「淡紅色の花……もしかして、王宮の壁の色みたいな?」

「ああ。そうそう、あんな色だよ」

「まあ、そうなのですね」
 
 王宮を見つめながら色を想像してみました。
 どんな花なのでしょうか? 花びらの形は? 一重かしら、八重かしら。興味が出てきました。どんなふうに咲くのでしょう。見てみたいです。

「これも、来年でないと見れないけど、招待しようか?」

「あっ。は……」

 寸でのところで踏みとどまったわ。

 危ない、危ない。

 また、引っかかるところでした。ここで調子に乗って返事をすると今までと同じになってしまうわ。距離を置いた方がよいと思うのに、反対にもっと縮まってしまうわ。
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