婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「どうしたの? 見たくないの? 桜。とってもきれいだよ。この世のものとは思えないくらいにね。昼も夜もどちらも見ごたえがあるよ」

 きれい。この世のものとは思えないって……そんなに? 
 そんなことを言われたら揺れるじゃないですか。我慢しているのに。

 「桜の木は今は国交のないジュラン皇国から贈られた貴重なものなんだ」

「ジュラン皇国ですか?」

 珍しい国名に言葉がつい出てしまいました。

 歴史での授業で、確か五十年ほど前に一か国を除いてすべての国との国交を閉じ鎖国状態の国があると習いました。
 それがジュラン皇国。

 島国で独自の文化が息づいていてとても華やかな国だといわれています。
 昔は友好国で交流もあったとか。
 けれど他国との戦争が続き終戦を期にうちの国とも国交断絶したまま、今に至っていると。

「そう。国交が途切れる前に王女が誕生したお祝いに桜の木が贈られたんだよ。いわば記念樹だね」

「そんな、貴重な木がこの国にあるなんて……」

 さらに興味をそそられるじゃないですか。

 やめてください。

 好奇心を煽るのは。
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