婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
静かな室内に数十秒間の沈黙がやけに長く感じた。わたくしを見つめるスティールの顔が憐れむような呆れたような表情に見えるのは気のせい?
「……フローラ嬢に、僕が会えると思う?」
「それは……同じ学園にいるのだし、顔を合わせることだってあるでしょう?」
一縷の望みだった。
エドガーとの婚約が解消されたのは大きな損失だった。
慰謝料を支払うためにいくつかの土地を手放した。テンネル家の資産を思えばそれほどの痛手はないけれど、失ったのはお金では計れないもの。
「見かけたことは何度かあるけど、学年も違うし、これといった用事もないのに軽々しく会いには行けないよ」
「そうかもしれないけれど、挨拶くらいはしないの?」
「遠くから、どうやって挨拶しろと?」
冷ややかなスティールの声にわたくしは一瞬、息をのむ。
こちらの邪な思惑を見透かすように冷淡に見つめ返すスティールに
「困るようなことを聞いてしまったかしら?」
気づかないふりをして平静を装って尋ねてみた。
「困るって……ほどでもないけど。本当に接点はないんだよ。母上の期待を裏切って申し訳ないけど」
「……」
「……フローラ嬢に、僕が会えると思う?」
「それは……同じ学園にいるのだし、顔を合わせることだってあるでしょう?」
一縷の望みだった。
エドガーとの婚約が解消されたのは大きな損失だった。
慰謝料を支払うためにいくつかの土地を手放した。テンネル家の資産を思えばそれほどの痛手はないけれど、失ったのはお金では計れないもの。
「見かけたことは何度かあるけど、学年も違うし、これといった用事もないのに軽々しく会いには行けないよ」
「そうかもしれないけれど、挨拶くらいはしないの?」
「遠くから、どうやって挨拶しろと?」
冷ややかなスティールの声にわたくしは一瞬、息をのむ。
こちらの邪な思惑を見透かすように冷淡に見つめ返すスティールに
「困るようなことを聞いてしまったかしら?」
気づかないふりをして平静を装って尋ねてみた。
「困るって……ほどでもないけど。本当に接点はないんだよ。母上の期待を裏切って申し訳ないけど」
「……」