婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「そ、それは……ど、どういう……」
予想外の言葉に声が震えてかすれて、うまく言葉が出てこない。
「どうもこうも何も、そのまま。僕はテンネル家は継がない。当主になる気持ちもさらさらないよ」
「なっ……」
スティールの清々しいほどの物言いにわたくしは言葉を失った。膝の上の冷たくなった指先を温めるように包み込む。顔色も青褪めていることだろう。
動揺しているわたくしとは対照的にスティールは冷静だ。
姿勢を正し、対峙するようにまっすぐに見つめる瞳と引き締まった真剣な表情に嘘はないのかもしれない。
けれど……
「どういうことなの? 退学する際に次期当主に指名することは伝えていたはず」
動転した気持ちを落ち着かせながら、残る理性を総動員して荒げそうになる声を抑える。ここで感情にまかせて喧嘩腰になっては話は進まない。
「うん。それはちゃんとわかっていたよ。でも、兄上が当主に決まっている時点で、僕は家を出て独立しようと思っていたんだ。そのために留学をしたんだし、父上も母上も承知してると思っていたよ」
「事業を手伝ってくれるのではなかったの?」
「えっ?」
スティールはびっくりしたように見開いた目を数回瞬かせた。
予想外の言葉に声が震えてかすれて、うまく言葉が出てこない。
「どうもこうも何も、そのまま。僕はテンネル家は継がない。当主になる気持ちもさらさらないよ」
「なっ……」
スティールの清々しいほどの物言いにわたくしは言葉を失った。膝の上の冷たくなった指先を温めるように包み込む。顔色も青褪めていることだろう。
動揺しているわたくしとは対照的にスティールは冷静だ。
姿勢を正し、対峙するようにまっすぐに見つめる瞳と引き締まった真剣な表情に嘘はないのかもしれない。
けれど……
「どういうことなの? 退学する際に次期当主に指名することは伝えていたはず」
動転した気持ちを落ち着かせながら、残る理性を総動員して荒げそうになる声を抑える。ここで感情にまかせて喧嘩腰になっては話は進まない。
「うん。それはちゃんとわかっていたよ。でも、兄上が当主に決まっている時点で、僕は家を出て独立しようと思っていたんだ。そのために留学をしたんだし、父上も母上も承知してると思っていたよ」
「事業を手伝ってくれるのではなかったの?」
「えっ?」
スティールはびっくりしたように見開いた目を数回瞬かせた。