婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「けれど、今は違うわ。状況が変化したのだから方向転換も必要だと思うわよ。あなたは次期当主なのだから」
これからはテンネル家の将来のことを考えてもらわなければ……
「うん。だから、継がないと言っている。はっきり言えば興味もないよ」
そんな……
バッサリと切り捨てなくても。
振り出しに戻ってまたもや言葉を失った。
わたくしは重ね合わせた手をぎゅっと握りしめて、声を絞り出す。
「あなたがいなければ……テンネル家はどうなるの?」
エドガーが使えない今、スティールにまで見放されたら……
主人が元気なうちはいいでしょう。でも、そのあとは? わたくしたちも年を取るわ。いつまでも現役でいるわけにはいかない。それに次期当主がいないとなれば侮られることもあるかもしれない。
ただでさえ醜聞があるのに。
「親戚から優秀な人材を見つけたらいいんじゃない?」
軽率ともいえるような口ぶりで軽々しく答えるスティール。
「もっと、はっきり言えば、兄上の尻ぬぐいはまっぴらごめん、かな?」
「エドガーの?」
「兄上は婚約解消の意味を理解していないみたいだしね。なんというかいろんな意味でイタイというか……あれが兄かと思うと恥ずかしすぎて」
よほどエドガーの態度がひどいのだろうか。スティールは目も当てられないとでも言いたそうな表情をしている。
これからはテンネル家の将来のことを考えてもらわなければ……
「うん。だから、継がないと言っている。はっきり言えば興味もないよ」
そんな……
バッサリと切り捨てなくても。
振り出しに戻ってまたもや言葉を失った。
わたくしは重ね合わせた手をぎゅっと握りしめて、声を絞り出す。
「あなたがいなければ……テンネル家はどうなるの?」
エドガーが使えない今、スティールにまで見放されたら……
主人が元気なうちはいいでしょう。でも、そのあとは? わたくしたちも年を取るわ。いつまでも現役でいるわけにはいかない。それに次期当主がいないとなれば侮られることもあるかもしれない。
ただでさえ醜聞があるのに。
「親戚から優秀な人材を見つけたらいいんじゃない?」
軽率ともいえるような口ぶりで軽々しく答えるスティール。
「もっと、はっきり言えば、兄上の尻ぬぐいはまっぴらごめん、かな?」
「エドガーの?」
「兄上は婚約解消の意味を理解していないみたいだしね。なんというかいろんな意味でイタイというか……あれが兄かと思うと恥ずかしすぎて」
よほどエドガーの態度がひどいのだろうか。スティールは目も当てられないとでも言いたそうな表情をしている。