婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 学園から帰るとバートから渡された手紙。

 百合の蝋封が印象的な封筒を開けると、サンフレア語で書かれたざっくばらんな文章にクスッと笑いが漏れました。

 ―― ローラ。こんにちは。
    昨日はとても有意義で充実した時間が過ごせたよ。ありがとう。
    ところで、北の宮では珍しい花がもうじき見頃を迎えるんだ。
    よかったら見に来ないか?
    待ってる。       レイより ――
  
 
 レイ様、早いです。
 サンフレア語での手紙のやり取りを約束したのは昨日のことでしたのに。

 形式ばった文面ではなく、気さくな文章を目にして心がほっこりと和みました。

 手紙は顔が見えない分言葉の使い方にとても気を使うので、難しく考えがちだけれど、こんな気軽な感じでよければ続けられそうだわ。

 相手は王子殿下ですから、失礼のないように気をつけないといけないけれど。

 私はもう一度手紙を読みました。

 目を通しながら、まるでレイ様が目の前でしゃべっているように思えて、私の顔にも自然と笑みが浮かんできます。
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