婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「お母様? どうかされましたか?」

 固まったまま動かないお母様に声をかけます。
 すると、やっと我に返ったのか

「あっ、いえ、なんでもないわ」

 平静を装うように、菓子皿に手を伸ばしたお母様はクッキーを一口齧りました。

「美味しいわね。でも、ローナの砂糖漬けが甘い分、もう少し砂糖をひかえてもよさそうね」

 私も試食してみました。
 サクッとした食感は合格ですが、お母さまの言う通りで甘すぎました。上にトッピングしているローナはグラニュー糖をまぶしているので、甘さがくどくなってしまったようです。

「そうですね。では、砂糖控え目のものも作ってもらいましょうか?」

「それがいいわね。砂糖の種類も変えてみてもいいかもしれないわ」

 お母様の言葉に私も頷きます。
 種類によって砂糖の甘さも違いますから、試してみるのもいいかもしれません。
 
「もう一度、レシピを確認して練り直してみます」

「そうね。それがいいわね。わたくしも協力するわ」

 クッキーはもう少し工夫が必要ですね。いろいろアイデアを出して考えてみましょう。

 いろんな種類のクッキーを作って、みんなで食べ比べをしてみたらどうかしら。
 クッキーは改良の余地ありということでお母様と意見が一致したので、私は紅茶を飲んで一息つきました。
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