婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 ディアナが眉を顰めて見つめる方向に視線をはしらせると……エドガー様とリリア様がいました。
 数人で楽しそうに話しているようで、遠目からでもリリア様のはしゃいでいる様子が窺えます。大丈夫でしょうか? あまり騒がしいと皆さんの迷惑になるのではないかしら?

「品のない人たちね。テンネル侯爵家の常識はどうなっているのかしら?」

 ディアナは眉間にしわを寄せています。ハイスター公爵様は変わらず穏やかな表情をなさっていますね。感情を表すことはなさらないのでお気持ちが読めないのです。ポーカーフェイスというのでしょうか。見習いたいものです。

「特別に許可を頂かれたのではないのでしょうか? テンネル侯爵家嫡男の婚約者様ですもの」

「特別にね。それであればよいのだけれども。それよりも、ローズ様がそろそろいらっしゃるのではないかしら」

 あたりを見回すとすぐそばまで来ていらっしゃいました。
 夜会では貴族が並んで言葉を頂くのですが、ガーデンパーティーの時は王妃陛下自らが動いてあいさつをされるのがしきたりになっています。

 そして、いよいよ私の番です。

「フローラ嬢。本日は来てくれてありがとう。久しぶりに会えてうれしいわ」

「本日はお招きいただきありがとうございます」

 私は最上のカーテシーをして挨拶をします。バーミリオンの髪と菫色の瞳が鮮やかでお美しくてその場がぱあと華やぎます。
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