婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

子猫を助けただけなのに

「きれい」

 色とりどりの薔薇を見ながら思わず感嘆の声が出てしまいます。
 ディアナ達は知り合いの方たちと話があるとかで席を離れたので、手持ち無沙汰になった私は庭園の散策に出かけることにしました。庭園内であれば自由に行動してよいとのことで、ちらほらと薔薇を見学している方もいます。

 庭園を見回すと大小の花を組み合わせつつ、薔薇の花の色がグラデーションになっていて見ごたえがあります。これも職人さんたちの工夫と技術の結晶なのでしょう。
 研究者の一人として話を聞いてみたいなあなどと思いつつ、見て回っているとけっこう奥まで来てしまったようで、あたりには人の姿が見えなくなりました。

 そろそろ、会場に戻った方がいいのかもしれません。黙って出てきたので、ディアナも私を探しているかもしれないですしね。

 帰りましょう。そう思って、踵を返そうと思ったら……

 ミッ……

 どこからか、声が? 気のせい? 

 ミャー。

 やっぱり、聞こえます。

 ミャー。ミャー。

 猫の声のよう。しきりに鳴いているようです。迷子になったんでしょうか?
 私は周りをキョロキョロと見回しましたが、姿は見えません。

 飼い猫か、野良猫が散歩をしているのかもしれません。気にすることはないとは思いますが。

 ミャーン。ミャーン。
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