婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 部屋って、部屋って、どこですか?

「会場に戻らなきゃ」

「ああ、ガーデンパーティーの招待客だったんだね」

「そうです。戻らないと友人が心配してるかもしれません」

 庭園に出てからどのくらい時間がたったのでしょう? ディアナが探しているかもしれません。
 私は必死になって何とかこの場から逃れようと言いつのります。どなたかは、はっきり知りませんけれど、解放してください。お願いします。半分涙目です。というかもう、泣きたいです。
 
「友人て、誰かな?」

 名前を言えば帰してもらえるのでしょうか。

「ディアナ・マクレーン伯爵令嬢です」

「そう。なら、問題ないね」

 えっ? 何が問題ないんですか? 

 私を離してくれる気配もなくずんずんと歩いていきます。

「放してください。会場に帰らないと、お願いです」

 何とか開放してもらおうとジタバタと暴れると

「こら、そんなに暴れたら、落っこちるよ」

「きゃあ」

 言われたそばから視界がぐらりと揺れてバランスを崩しそうになって、思わず男性にしがみついてしまいました。シトラスの香りが微かに鼻を掠めてドキリとします。

「ねえ、どこに行くの?」

 ドキドキしている私をよそに、男の子が男性の服の裾を引っ張ります。
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