婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「俺のことはレイと呼ぶように」

「それは、ちょっとどうかと。砕けすぎではないでしょうか」

 お互い初対面で愛称で呼ぶほど親しいわけでもありませんし、調子に乗って便乗しすぎではないでしょうか。

「レイって呼んでごらん?」

 聞いていらっしゃいません。レイニー王子殿下お願いですから、きらびやかな笑顔で迫ってこないでください。心臓に悪いです。

「僕のことはリッキーって呼んで。ローラおねえちゃん」

 リチャード殿下、無垢な笑顔で同じように迫ってこないでください。幼気な子供はその存在だけで破壊力がありますから。距離を置こうにもソファに阻まれて動けません。

「ミャー。ミャー」

 マロンまで。ふわふわの毛並みと縋るような甘えた声で鳴かれたら、つい何でも許してしまう気になるから反則です。

「呼んでほしいよなー」

「ねー」

「ミャー」

 皆さんなんでそんなに息がぴったりなんですか? 男同士の友情とかってやつですか? もしかして私をからかってるんですか?  

「わかりました。レイ様、リッキー様、マロン。そのようにお呼びしてよろしいでしょうか?」

 どこかで妥協しないと終わらないかもしれません。
「様はいらないけどな。今はこれで許す」

「うん。僕もいいよ」

「ミャーン」
 
 息ぴったりですね。とりあえず皆さん納得してくださったようです。一日限定の呼び名ですね。
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