婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「リチャード殿下はフローラ様に懐いてらっしゃるのですね」

 先生は微笑ましそうに目を細めてリッキー様を見つめています。

「今日初めて会ったばかりなんですけれど。不思議です」

 慕われるのは悪い気はしませんが、マロンを助けたというのもあるのかしら。

「初めてでも子供は人間の本質を見抜く力がありますからね。リチャード殿下はフローラ様の人柄の良さに惹かれたのでしょう」

「先生。私はそんな良いところなんてありませんわ」

 だって、いつも地味だ、陰気だ、暗いって言われていましたから。私に良さなんて……ないと思います。

「あなたにはいいところがたくさんあると思いますよ。卑下する必要はありません。私が保証します」

 自信に満ちた力強い声で先生は落ち込んだ私を慰めるように断言してくれました。
 ああ、こういうところがダメなのですね。先生に気を使わせてしまいました。

「先生、ありがとうございます。それと、話の続きなのですが、単刀直入にお聞きします。室内履きを商品化する気はありませんか?」

 いつまでもくよくよしてても物事は進展しませんから、脱線してしまった話を元に戻して先生に聞きました。

「商品化ですか?」

 思いがけなかった提案だったのでしょう。先生は心底びっくりといった表情をしています。

「はい、そうです。今日初めて履いてみて、その履き心地の良さにいい意味でカルチャーショックを受けました。もちろん商品化するには多少の改良も必要にはなってくるでしょうが、私はとても気に入りました。皆さんはどうですか?」

 私はエルザ達に視線を向けました。
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