【だから、近くに…】
第一章~プロローグ~
「んじゃまぁ、
そろそろ行く?」
緊張感のない顔で、ジンが笑った。
こんな時に笑う奴、俺が知ってる男の中で、コイツぐらいだろうな
ジンのバイクに2ケツして、大きなビルの隙間から、建物の中を伺っている。
静かな裏通りの暗闇で、俺たちは目の前に、敵を見据えて、狙いを定める。
「てめっ、今から遠足行くんじゃねぇんだかんなっ」
「どうせなら、楽しく行かね?」
小さな声でコソコソ話しながら、そう言うジンの手も、よく見れば少し震えていて、
良く見なくても俺だって、手も足も震えていた。
「なぁ、ジン、
一緒に帰んだからなっ」
「カズこそ、
やられんじゃ、ねぇぞ」
やせ我慢でも何でもいい、顔だけは笑ってるジンが横に居るだけで、心強く感じた。
「ジン・・・、
約束だかんな」
「あぁ、わーったよ」