もう一度、契りを交わそう
運命は生まれた時から決まっていたのだと、一ノ瀬藍(いちのせあい)は理解し、体を震わせる。

「そんなに震えなくていい。私も嬉しいんだ」

男の腕の中に捕らえられ、何かの術をかけられて意識を手放してしまう。意識を失った藍を見つめ、男はようやくこの時が来たと喜び、口付けた。



藍の日常が大きく変わったのは、本当に突然のことだった。

住み慣れた函館の街を離れ、高校卒業後は東京の専門学校に進学し、築数十年のマンションで一人暮らしをしていた。

その日は少し頭痛と寒気がするものの、休んでしまえば授業についていけなくなると思い、ダルい体を無理やり起こし、服を着替えてメイクを軽く済ませる。

朝ご飯は食欲がなかったため食べず、かばんを手に家を出る。

「藍、顔色悪くない?」

「大丈夫?保健室行ったら?」

友達にそう声をかけられたが、藍は「大丈夫」と無理に笑って椅子に座る。今日は幸いにも授業は午前中だけだ。
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