もう一度、契りを交わそう

二人の子どもがいる三十代主婦の沢田真希（さわだまき）さんが心配そうな顔をし、椅子から立ち上がる。

「体調悪いなら無理したらダメじゃないですか！店長に言って今日は休んでください」

アルバイトを始めたばかりの高校生である田中優（たなかゆう）が駆け寄ろうとするのを、藍は「大丈夫だから！」と言って止めさせ、かばんを置こうとした。

その時、ぐにゃりと視界が大きく揺れて倒れそうになってしまう。それをしっかりとした腕が抱き止めてくれた。

「やっぱり、すごい熱だ。今日は休んだ方がいい」

藍より二つ年上で、有名大学に通っている五条伊織（ごじょういおり）が空いている手で藍の額に触れる。ボウッとする頭で藍は伊織を見上げた。

藍より二十センチほど高い身長に、少し長めの黒い前髪をしている。だが、その顔は整っており、目元にあるホクロがセクシーだ。

「五条さん……大丈夫ですから……」

ボウッと見つめてしまっていたが、早く着替えて仕事をしなくてはならない。だが、藍がもがいても弱った体では伊織の腕の中から逃れられない。