エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
プロローグ
結婚するなら一番好きな人と。
多くの人がそう願うが、現実は違うという。
あるデータによれば一番好きな人と結婚した人の割合は全体の三割くらいで、およそ七割の人たちがほかにもっと好きな人がいるのだとか。
荘厳なパイプオルガンの音色を聞きながら、神楽雅史はふと思い返す。
好きな人との結婚は絶対に望めないとあきらめたのは、いつの頃だっただろう。
高校生、いや中学生だったかもしれない。
それなのに今、目の前には女神かと見まがう最愛の女性が、少しはにかんだ美しい笑みを浮かべて雅史を見つめ返している。
繊細なステンドグラスから射し込む光の中、神父の厳かな声がチャペルに響き渡った。
「では、誓いのキスを」
純白のベールを持ち上げ、彼女の肩を引き寄せる。眩いほどの光に包まれた彼女を前にして、不覚にも鼓動が跳ねた。
顔をゆっくり近づけ、愛しいその唇に自分の唇を重ねる。
それは、気が遠くなるほど幸せなキスだった。
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