エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
これまでは話で聞くだけだったが、その存在をまざまざと見せつけられているから。
〝雅史のことはあきらめたほうがいい〟という院長の無言の圧力も感じる。
「あの、海老沢さん、私はなにをしたらいいでしょうか」
屈託のない笑みで問いかけられて目が泳ぐ。
「そ、そうですね……」
院長の口添えがある以上、楓はそれに従う以外にないだろう。
「では郵便物の仕分けをお願いします」
昨日の夕方届いた郵便物のチェックである。急ぎの案件とわかるものは先に開封したが、履歴の入力をまだしていない。
「わかりました」
郵便の束を楓のデスクに置き、芹菜が腰を下ろす。パソコンでファイルを開き、やり方を教えた。
素直に聞き入れて入力をはじめた芹菜に複雑な想いを抱えつつ、ナースステーションへ向かう。