エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

雅史に近くのカンファレンスルームに呼び出されたのは、彼の午前の診察が終わったあとだった。
テーブルを挟んで向かい合って座る。雅史は複雑な表情をしていた。


「急にすまない」


それはほかならぬ芹菜のことだろう。


「いえ、神楽先生のフィアンセの方なんですよね」


できる限り明るい声にする。そうしないと作り笑顔がすぐに崩壊しそうだ。


「大丈夫です。責任を持ってお預かりします」


院長が楓に課した職務なら、そうする以外にない。そもそも楓はこういった采配に意見できる立場ではないから。

もしかしたら院長は、楓と雅史の仲をまだ疑っているのかもしれない。だからこうして婚約者を見張り役にして差し向けた。
いや、楓だけでなく院内の女性スタッフ全員を相手に牽制しているのだろう。誰も雅史に近づくなと。


「お話が以上でしたら、仕事に戻らせていただきます」
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