エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

芳郎の用意する相手との結婚にも意義はなく、一緒に病院を盛り立てていこうと考えていた。――雅史と一夜を過ごす前までは。


「反抗期もろくになかった楓がね」


遠い目をして感慨深そうに呟く。

その眼差しからは父親としての愛情を少なからず感じた。幼い頃から厳しいことを言うほうだったが、ときにケーキやおもちゃでフォローもしてくれていたのをふと思い出す。

娘の楓に対して愛情があったのはたしかだろう。


「それで、どんな人なんだね」


手応えを感じ、思わずソファで身を乗り出す。


「勤め先の上司なの」


つい声が弾んだ。


「ほう。相手も結婚しようと?」
「彼もそう言ってくれてる。彼のお父様は、お父さんと大学で一緒に学んだそうなんだけど」
「私と同じ大学? 一緒に学んだということは医者なのか」
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