エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

尚美に指定されたのは、彼女の店からほど近いイタリアンレストランだった。何度か彼女と来たこともある。

楓が中に足を踏み入れると、すぐに奥のほうで「楓」と尚美が手を上げた。

白を基調とし、赤と青のカラフルなテーブルと椅子が並ぶポップな店内はランチを求めるお客で大賑わいだ。


「尚ちゃん、忙しいのにごめんね」
「いいのいいの。どのみちお昼は食べるんだから。楓はなににする?」


ワンレングスのボブヘアを耳に掛け、尚美が楓にメニューを差し出す。

アイラインもマスカラもしっかり施したメイクは、もともとはっきりした顔立ちの尚美をさらに華やかにする。芳郎より四つ年下の五十八歳だが、四十代前半でも通用するくらい若々しい。
ずっと独身を貫いており、今でもうんと年下の男性たちからアプローチされているそうだ。

尚美と同じくトマトとチーズのリゾットを注文し、早速話を切りだす。


「尚ちゃんは神楽慎一さんって知ってる?」
「神楽慎一、……知ってるけど」
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