エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

尚美の顔が突如曇った。芳郎と同じだ。


「だけどどうして楓からその人の名前が?」
「じつは私の勤め先の院長なの」
「え? 神楽総合病院で働いてるの?」


芳郎はもちろん彼女にも勤め先は伏せていたため、尚美は目を大きく見開いた。


「神楽慎一さんと父は同じ大学出身の同級生みたいなんだけど、ふたりの間になにかあったか、尚ちゃんは知ってる?」
「神楽さんと兄さんの間ね……」


尚美はなにやら話しづらそうに目線を落とし、グラスの水を飲んだ。
ふたりの間に良くない過去があるのは想像に容易いため、聞くのが怖くなる。


「すみれさんも亡くなって十年経ったし、楓には話してもいいかもしれないわね」
「……母も関係してるの?」


慎一と芳郎だけの問題と思っていたため、すみれまで出てきて困惑する。
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