エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
慎一が楓に『あなたのお父様は、雅史との結婚は許さないでしょう』と言ったのには、そんな理由が隠されていたのだ。
妻の元恋人の息子では、娘の結婚相手として手放しで喜べない。生前、妻がずっと忘れられずにいた男の息子なら余計だ。
雅史の話をしたときに芳郎が態度を豹変させた理由も、今ならわかる。
尚美の話を聞き終えた楓は呆然自失。心ここにあらず、視線を宙に浮かせたままだった。
「楓? なにかあったの?」
尚美から聞きだしておいて、自分はだんまりではいられない。
「じつは……」
楓は雅史との一連の話を尚美に話して聞かせた。
雅史との間では結婚の意思を固めているが、乗り越えなければならない壁はてっぺんが見えないくらいに高い。
製薬会社の令嬢、芹菜の存在も楓を悩ませていた。
「運命って、ときに酷なことをするのよね」