エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

「とにかく前途多難な恋だ」
「……うん」
「現代版のロミオとジュリエットってところね」


悲恋で終わりたくない。


「私の話を聞いても気持ちは変わらない?」


尚美の質問に力強く頷く。
雅史に対する想いに変化が起こるとしたら、さらに好きな気持ちが大きくなるくらいだ。それが反転するような事態にはならない。


「そっか。試練は恋愛のエッセンスだもんね」
「そういうんじゃないから」
「ごめんごめん。でも、楓がその恋を貫くのなら私は応援する」


慌てて謝り、尚美は続けた。

この想いを貫くには、相応の覚悟が必要になる。三十年以上も鬱々としたものを抱えた芳郎の心を動かすのは、並大抵ではないだろう。

それは雅史の父、慎一も同じ。すでに結婚相手として芹菜を送り込んでくるくらい、楓との結婚を許すつもりはないだろうから。


「大変お待たせいたしました」


スタッフがトマトとチーズのリゾットをふたりの前に置く。


「その前にまずは腹ごしらえね。早速食べましょ」


尚美と同時に手に取ったスプーンでリゾットをすくった。
< 165 / 322 >

この作品をシェア

pagetop