エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「俺たち、もういい大人だぞ。親にいちいち確認をとる必要はない」
それはそうかもしれないが、ふたりが抱えているのは親を巻き込んだ少々難しい課題だ。
「俺はすぐにでもここに呼びたいけど、楓はそうでもないみたいだな」
「違います。私も雅史さんと一緒に暮らしたいです」
不安定な状況だからこそ、ふたりでいる時間をできるだけとりたい。
もしかしたら強気な言葉で笑い飛ばした雅史も、漠然とした不安を感じているのではないか。
「なら問題なし」
「それじゃ、アメリカの学会が終わってからにしませんか?」
オハイオ州にあるジェファーソン州立病院にいる雅史の恩師からの誘いが、このあとに控えている。
急ぎの予約患者はべつの医師に託し、そのほかは日程を振り替えて準備は万全だ。
雅史は逡巡したあと、「そうだな、そうしよう」と頷いた。
「楓とアメリカに行くのも楽しみだな」
「遊びじゃないですからね?」