エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
策略と妊娠疑惑
芹菜が雅史の秘書補佐として来てから間もなく三週間が経過する。
コミュニケーション能力が高く、脳神経外科にすっかり馴染んでいるのはすごいと思わされる。しかしそれとは裏腹に、楓は困っている点があった。
「海老沢さん、石川さんって大企業の令嬢なのに気さくな女性だよね」
ナースステーションでそう声をかけてきたのは、麻酔科の男性技師だった。
「そうですね」
「ほかの科にもちょくちょく顔を出して挨拶してくし。みんなも感じがいいねって話してる。神楽先生の婚約者なんだろう? あんな女性ならいいよな」
そういった話はあっという間に広がるもの。今では院内中に知れ渡っている噂だ。
「あ、そういえば海老沢さん、最近よくミスるって聞いたけど、どこか体調でも悪いの?」
「え? ミスって、私がですか?」
なんの話かと聞き返す。細心の注意を払って仕事をしているため、スルーできない言葉だ。