エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「海老沢さん、どうかした?」
不意に声をかけられ我に返る。沙月だ。
「あ、いえ」
「そう?」
顔を覗き込まれたため不自然に目を逸らすと、その先に件の人物、芹菜が現れた。先ほど楓がお願いした郵便物の仕分けの中に雅史以外のものが混ざっていたらしく、ナースステーションのカウンターでスタッフに封書を手渡している。
にこやかな微笑みがアイドルのようにかわいらしい。受け取った男性スタッフも、まんざらでもないといった様子で芹菜に「ありがとう」と返した。
「あの子、意外と小賢しいよね」
「え?」
沙月が思いがけない言葉を発する。
誰とでもうまくやっているように見えたが、中には違う捉え方をしている人もいるみたいだ。
「愛嬌はあるし、あの容姿だから男性陣は一様にデレデレしてるけど。海老沢さんも大変でしょう」
「あ、いえ、そんなことは……」