エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

芹菜に妙なことを吹聴されていると知ったばかりのため、正直に〝そうなんです〟と言いたかったが、お腹に力を入れてなんとか堪える。もしかしたら、さっきの男性スタッフの勘違いの可能性も拭い去れない。

芹菜が自分の話をしていたのを楓のミスだと聞き間違えたかもしれないから。


「海老沢さんは人を悪く言わないから我慢してるのはわかってる」


トントンと楓の肩を叩いて先を続ける。


「だけど私ね、彼女があなたを貶めるようなことを言ってたのを聞いちゃったの。本当ならこんな話、本人の海老沢さんには言うべきじゃないんだろうけど、気をつけたほうがいいと思う」


沙月は険しい表情を芹菜に向けてから、その表情を解いて楓を見た。


「……わかりました。ご忠告ありがとうございます」


それしか言えず、楓は芹菜の後を追うようにして部屋に向かう。
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