エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

驚くべき事態が起こったのは、その翌日だった。


「私の航空券がないって……」


芹菜が受け取ってきたチケットを確認した楓は、二枚を並べて愕然としていた。

明日、雅史と楓のふたりでアメリカに発つ予定だったため、航空券を予約。今日、それを総務から受け取ってくるよう芹菜にお願いしたのだが……。

楓の目の前には雅史と、なぜか芹菜の名前のチケットがあった。


「石川さん、これはどういう……?」
「院長から直々に指示があったんです。アメリカには私が同行するようにって。海老沢さんは日本で大事な仕事があるからとおっしゃっていました」


大事な仕事とはなんなのか。楓は雅史の秘書だ。


「心配しないでください。神楽先生なら私がしっかりお世話しますから」


楓が動揺しているのを知りながら、芹菜は満面の笑みを浮かべた。

どことなく勝ち誇った表情に見えるのは、楓が彼女に対して鬱々としたものを抱えているせいだろうか。
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