エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
そうだろう?というニュアンスを眼差しに乗せ、雅史が楓を見る。
「でもこれは院長指示なので。もうチケットの手配も済んでいますから」
「院長? ……ちょっと行ってくる」
芹菜の反論に雅史は白衣を翻し、入ってきたばかりのドアから出ていった。
雅史が出ていった部屋に芹菜とふたり残された楓は、仕事が手につかず気もそぞろ。芹菜が雅史と一緒にアメリカに行くのは、どうしたって不安しかない。なにか良くないことが起こりそうな気がして、胸の奥がひりひりする。
対して芹菜はうれしさを隠せない様子で鼻歌でも飛び出しそうな顔だ。
それが余計に楓の気持ちを急かした。
それから十分と経たずに雅史は戻った。浮かない表情をした顔から結果は明白だ。
「神楽先生、院長はなんておっしゃってました?」
芹菜は〝私の言った通りだったでしょう?〟と言いたげな目だった。