エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
雅史は彼女の問いには答えず、楓を部屋の外に連れだし、すぐそばのカンファレンスルームに引き入れた。
「院長の差し金だろう。楓ではなく彼女を連れていくようにと指示された」
「……そうですか」
仕事上の院長指示であれば背くわけにはいかないだろう。
それならば、暗い表情をする雅史と一緒になって落ち込んでもいられない。楓はへの字になった口元をぐっと引き上げ、雅史に笑いかけた。
「気をつけていってきてくださいね。お土産はそうですね……高級ブランドの香水で手を打ちます」
意識して明るくする。
「楓は香水、つけないだろ。っていうか、楓の匂いがなくなるから俺は反対だ」
「私もたまには大人の女性っぽいセクシーな香りを纏いたいです」
「楓の匂い自体セクシーだからいらない」
抱き上げてテーブルに座らせた楓の首筋に、雅史が顔を埋める。匂いを嗅ぎ尽くすように息を深く吸い、吐き出すと同時に唇を押しつけた。