エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「アメリカ行きの件は心配するな。いくら彼女が一緒だからといって、なにも起こらない。彼女に靡くなんてないから」
首にかかる雅史の吐息のくすぐったさに身をよじると、「真面目に聞いてるか?」と念を押される。
「聞いてます。でも息がかかってくすぐったい」
「それなら息じゃなくて」
意味深に囁いたあと唇を重ね合せた。表面をなぞるだけのキスなのに、雅史のぬくもりで不思議と不安が薄れていく。
〝大丈夫かな……〟が〝たぶん大丈夫〟になり、〝絶対に大丈夫〟へと変わっていった。
「このあとは執刀で夜まで病院だけど、俺の部屋で待っててくれるか?」
キスが解け、雅史が間近で甘い誘惑を囁く。
「……はい」
ひと呼吸置いて首を縦に振る。そんな誘いを楓が断れるはずもない。すぐに返事をできなかったのは、キスで上がった呼吸を整えるためだ。
満足そうに笑う雅史に楓も微笑み返した。