エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
《なにか変わったことはない?》
「……ありません」
《今、微妙に間があったけど》
「時差だと思います」
余計な心配をかけたくないため、昨夜、慎一と食事をした報告は帰国してからにしたほうがいいだろう。
《なるほど、時差か》
ククッと笑う彼の声を聞いていると、遠く離れている感じがしない。十三時間も時差のある場所ではなく、車を飛ばせば数十分で到着する感覚だ。
「あの、石川さんはどうしてますか?」
《彼女も部屋だろう。心配ならしなくていい。彼女が裸で迫ってこようが、なにも起こらないから》
思わずそんなシーンを想像して絶句する。芹菜ならやりかねないと思ったのは、楓の偏見に過ぎない。彼女に対して失礼だ。
《楓?》
「はい」
《会いたい》
雅史の声が胸の奥にストレートに響く中、〝妊娠〟の二文字が頭を渦巻く。