エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

*****

学会視察後、アメリカ時代にお世話になったスチュワートとの懇親会を終えた雅史は、芹菜を伴い宿泊先のホテルへ戻ってきた。

学会での各研究者の学術発表は非常に興味深いものだった。
その中でも特に脳卒中急性期に磁気刺激治療を併用すると麻痺の回復を促進し、後遺症を減らせるという研究は、雅史の専門分野でもあるため懇親会では論文発表者の医師と議論に花を咲かせた。

心房細動患者と脳卒中発症リスクに関するまったく新しい概念についてもそう。

気持ちを高揚させながらエレベーターで二十階まで上がり、部屋の前で解散しようとしたそのとき、芹菜に呼び止められる。


「雅史さん、このあと少しお時間を取れませんか?」
「悪いが、部屋でまとめたいものがある」


彼女に付き合っている時間はない。


「そんな……。少しくらいいいじゃないですか。こっちに来てから全然相手にしてくれないし……。私、英語が話せないから、学会も懇親会もずっと寂しい想いをしていたんです」
「だったらなぜ同行した? キミはなにをしにアメリカへ来たんだ。遊び半分は迷惑だ」
< 200 / 322 >

この作品をシェア

pagetop